2 かりん

「かりん」2025年4月号 十首

指につまむ塩1g死魚に振りまことしづかな仕事してをり 川野里子先駆けて河津桜の膨らめり言葉を求めてゆくような永遠 遠藤由季地上より上がる寒さに水仙が言葉と同じ匂いとどける 中山洋祐窓越しに眼差し優し月読命(つくよみ)の死者と聖夜の静寂(しじ...
1 未来

「未来」2025年4月号 十首

青鷺がのそりと草の坂を登り睥睨といふ感じに立てり 大辻隆弘同じ同じかへりても我火を放つべし世に人に天に御仏に 紀野恵枯れすさび繁りり立つ蓮群るる間(ま)のくらくたたうる秋の水の闇 奥住毅あと一度の雨ですべてが散るだらう黄(きい)の紅いのその...
3 塔

「塔」2025年3月号 十首

採る人のなければ柚子の実は落ちるどんどん落ちて坂をころがる 永田和宏秋景のなかを行くことわたくしの輪郭をときに光へ砕き 梶原さい子死ぬと言い死ぬ人わずか水面に背びれを出して金色(きん)の鯉ゆく 川本千栄横顔で目があふ鳥の渡りなどおもへり互み...
2 かりん

「かりん」2025年3月号 十首

人外のものとなりゆくはじめにてまづ夢魔と会ふわれの残り生(よ) 馬場あき子味爽のラナンキュラスにふるみぞれいのちは冷ゆる花といえども 大井学民意とふ立派な車輪ゴリゴリと骨にひびける世事から降りき 土屋千鶴子よく太つたじやが芋のごとき檸檬(レ...
1 未来

「未来」2025年3月号 十首

冬の日の岸に曳きあげられし舟ゆれゐる草が舷(ふなべり)を打つ 大辻隆弘白鳥のわたりはとはにあたらしくぢきに飛び去るのはわたしたち 山田富士郎世界一古き王統何がなし嬉しみ薬狩りの真似事 紀野惠口腔に椎茸の香はひらきたり肉の透けたる焼売の美し ...
2 かりん

「かりん」2025年2月号 十首

後ろから風の寒さがわれにふれ風はひとには言葉与えず 中山洋祐台風の掻き乱したる山の木を切り整える天(あめ)の僕(しもべ)は 本屋敏郎通るたび腰折り礼なす姥の庭ばらは喪のごと滅(けし)紫(むらさき)なる 影山美智子渡海船のあゆみの板を踏み外す...
3 塔

「塔」2025年2月号 十首

裂(きれ)深きぶどうの葉なりその裂の深さに世界分断されつ 三井修火(ほ)明かりにただ濡れてをりいつかしら逢へざる日々の落葉の嵩 梶原さい子夕映えが山国川を滑りゆくひと日を終へる火照り率ゐて 祐德美惠子どの家も飢饉に強き柿の木を植ゑたる里に人...
1 未来

「未来」2025年2月号 十首

未来短歌会「未来」2月号より十首選
3 塔

「塔」2025年1月号 十首

どんぐりの小枝を折りて持ちゆくに落とせり四方よもに弾けとびたり 花山多佳子栗茹でて冷めるを待てばおのづから齢深まる日日を諾ふ 干田智子海亀の巣穴の変化確かめて星と海とのはざまに座せり 河野正もうゐないひとに掛かつてくる電話かみふうせんのやう...
2 かりん

「かりん」2025年1月号 十首

年はじめ「人間憂ひの花ざかり」と古き世のうた謡ひ嘆かふ 馬場あき子いくすぢも飛行機雲のほぐれそめ蛇腹のごとく街の上へ覆ふ 三原豪之石鹸玉凍りゆく朝そのままに千年浮かぶを祝ひつづけむ 渡邊新月アカゲラの木をつつく音とわれが枝踏み折る音の距離を...