3 塔 「塔」2025年5月号 十首 花の色褪せておれどもその姿いまだとどめる庭の残菊 三井修この宵はホイットマンの詩を読まむ従軍看護師たりし男の 三井修池の表に雪滲みゆくここまでを誰も殺さず殺されず来て 梶原さい子送料の半額払ひ借りうける従軍看護婦の回想の手記 小田桐夕悲鳴を... 2025.05.26 3 塔
2 かりん 「かりん」2025年5月号 十首 まだ萌えずはぜの天辺の細枝も下(しづ)枝(え)も内攻深き沈黙 馬場あき子そういうの、よくない!と子どもが叫ぶ禁止事項をひとつ増やせば 齋藤芳生そういうの、よくない!と思えども言えず新規顧客の獲得のため 齋藤芳生やはらかき肉球に触れ安らけし言... 2025.05.05 2 かりん
1 未来 「未来」2025年5月号 十首 貢納を経済援助と言ひ換へてさらさらと金色の海に流すやうだ祖国も 紀野恵前茶碗に輝き落つる数滴を見つむるときに一座はしづむ 門脇篤史黒漆の重ねの箱を仕舞うときはつかに反すこの世のひかり 日下淳いまきみが見ているすべてはいつかきみが失う景色 た... 2025.05.05 1 未来
3 塔 「塔」2025年4月号 十首 橋わたる人から影は伸びており枯れ野をおぎり水上をゆく 吉川宏志岸辺よりしずかに暮れてゆく湖(うみ)の真中はいまだ余光を保つ 三井修おかえりと家路流れるふるさとの海に沈んだ帰れない家 大林幸一郎キジバトの鳴かなくなったふるさとに飼っていく東京... 2025.04.27 3 塔
2 かりん 「かりん」2025年4月号 十首 指につまむ塩1g死魚に振りまことしづかな仕事してをり 川野里子先駆けて河津桜の膨らめり言葉を求めてゆくような永遠 遠藤由季地上より上がる寒さに水仙が言葉と同じ匂いとどける 中山洋祐窓越しに眼差し優し月読命(つくよみ)の死者と聖夜の静寂(しじ... 2025.04.26 2 かりん
1 未来 「未来」2025年4月号 十首 青鷺がのそりと草の坂を登り睥睨といふ感じに立てり 大辻隆弘同じ同じかへりても我火を放つべし世に人に天に御仏に 紀野恵枯れすさび繁りり立つ蓮群るる間(ま)のくらくたたうる秋の水の闇 奥住毅あと一度の雨ですべてが散るだらう黄(きい)の紅いのその... 2025.04.25 1 未来
3 塔 「塔」2025年3月号 十首 採る人のなければ柚子の実は落ちるどんどん落ちて坂をころがる 永田和宏秋景のなかを行くことわたくしの輪郭をときに光へ砕き 梶原さい子死ぬと言い死ぬ人わずか水面に背びれを出して金色(きん)の鯉ゆく 川本千栄横顔で目があふ鳥の渡りなどおもへり互み... 2025.03.25 3 塔
2 かりん 「かりん」2025年3月号 十首 人外のものとなりゆくはじめにてまづ夢魔と会ふわれの残り生(よ) 馬場あき子味爽のラナンキュラスにふるみぞれいのちは冷ゆる花といえども 大井学民意とふ立派な車輪ゴリゴリと骨にひびける世事から降りき 土屋千鶴子よく太つたじやが芋のごとき檸檬(レ... 2025.03.08 2 かりん
1 未来 「未来」2025年3月号 十首 冬の日の岸に曳きあげられし舟ゆれゐる草が舷(ふなべり)を打つ 大辻隆弘白鳥のわたりはとはにあたらしくぢきに飛び去るのはわたしたち 山田富士郎世界一古き王統何がなし嬉しみ薬狩りの真似事 紀野惠口腔に椎茸の香はひらきたり肉の透けたる焼売の美し ... 2025.03.05 1 未来
2 かりん 「かりん」2025年2月号 十首 後ろから風の寒さがわれにふれ風はひとには言葉与えず 中山洋祐台風の掻き乱したる山の木を切り整える天(あめ)の僕(しもべ)は 本屋敏郎通るたび腰折り礼なす姥の庭ばらは喪のごと滅(けし)紫(むらさき)なる 影山美智子渡海船のあゆみの板を踏み外す... 2025.02.14 2 かりん