2 かりん

2 かりん

「かりん」2025年5月号 十首

まだ萌えずはぜの天辺の細枝も下(しづ)枝(え)も内攻深き沈黙 馬場あき子そういうの、よくない!と子どもが叫ぶ禁止事項をひとつ増やせば 齋藤芳生そういうの、よくない!と思えども言えず新規顧客の獲得のため 齋藤芳生やはらかき肉球に触れ安らけし言...
2 かりん

「かりん」2025年4月号 十首

指につまむ塩1g死魚に振りまことしづかな仕事してをり 川野里子先駆けて河津桜の膨らめり言葉を求めてゆくような永遠 遠藤由季地上より上がる寒さに水仙が言葉と同じ匂いとどける 中山洋祐窓越しに眼差し優し月読命(つくよみ)の死者と聖夜の静寂(しじ...
2 かりん

「かりん」2025年3月号 十首

人外のものとなりゆくはじめにてまづ夢魔と会ふわれの残り生(よ) 馬場あき子味爽のラナンキュラスにふるみぞれいのちは冷ゆる花といえども 大井学民意とふ立派な車輪ゴリゴリと骨にひびける世事から降りき 土屋千鶴子よく太つたじやが芋のごとき檸檬(レ...
2 かりん

「かりん」2025年2月号 十首

後ろから風の寒さがわれにふれ風はひとには言葉与えず 中山洋祐台風の掻き乱したる山の木を切り整える天(あめ)の僕(しもべ)は 本屋敏郎通るたび腰折り礼なす姥の庭ばらは喪のごと滅(けし)紫(むらさき)なる 影山美智子渡海船のあゆみの板を踏み外す...
2 かりん

「かりん」2025年1月号 十首

年はじめ「人間憂ひの花ざかり」と古き世のうた謡ひ嘆かふ 馬場あき子いくすぢも飛行機雲のほぐれそめ蛇腹のごとく街の上へ覆ふ 三原豪之石鹸玉凍りゆく朝そのままに千年浮かぶを祝ひつづけむ 渡邊新月アカゲラの木をつつく音とわれが枝踏み折る音の距離を...