「かりん」2025年6月号 十首

硝子コップにひかりは宿りうごきをり人のゐぬ卓にほほゑみがある 川野里子

回天はあまりに細い長生きをしすぎた大人が入れぬように 芳山三喜雄

うみ深く地球の年表閉ぢ込めて七万年ここに水月湖あり 西村礼子

鉛筆の芯懇ろに削りゆく木のかをり良し春の待たるる 伊藤美枝子

一夜にしてKindleライブラリ真っ白になるんだろうな未来の焚書 古田香里

夏の陽は浅瀬の海に飛び込みて木漏れ日のごと風紋揺らす 清水恭子

半年の時間の中をくぐりたりみづ清くする水無月祓 渡邊新月

花の季すぎてさやけし青楓雨後のしたたるいのちゆり上ぐ 馬場あき子

浄土瞬間移動してきて足元のアヅマイチゲやキクザキイチゲ 渡辺松男

この星の土に草木に親しみて野蒜萱草など食ひ過ぐし来し 小林勝幸