2025-05

3 塔

「塔」2025年5月号 十首

花の色褪せておれどもその姿いまだとどめる庭の残菊 三井修この宵はホイットマンの詩を読まむ従軍看護師たりし男の 三井修池の表に雪滲みゆくここまでを誰も殺さず殺されず来て 梶原さい子送料の半額払ひ借りうける従軍看護婦の回想の手記 小田桐夕悲鳴を...
2 かりん

「かりん」2025年5月号 十首

まだ萌えずはぜの天辺の細枝も下(しづ)枝(え)も内攻深き沈黙 馬場あき子そういうの、よくない!と子どもが叫ぶ禁止事項をひとつ増やせば 齋藤芳生そういうの、よくない!と思えども言えず新規顧客の獲得のため 齋藤芳生やはらかき肉球に触れ安らけし言...
1 未来

「未来」2025年5月号 十首

貢納を経済援助と言ひ換へてさらさらと金色の海に流すやうだ祖国も 紀野恵前茶碗に輝き落つる数滴を見つむるときに一座はしづむ 門脇篤史黒漆の重ねの箱を仕舞うときはつかに反すこの世のひかり 日下淳いまきみが見ているすべてはいつかきみが失う景色 た...