「未来」2025年4月号 十首

青鷺がのそりと草の坂を登り睥睨といふ感じに立てり 大辻隆弘

同じ同じかへりても我火を放つべし世に人に天に御仏に 紀野恵

枯れすさび繁りり立つ蓮群るる()のくらくたたうる秋の水の闇 奥住毅

あと一度の雨ですべてが散るだらう(きい)の紅いのそのさざめきも 谷とも子

ねこはいまこたつの国の王になりときどき民に爪などたてる しま・しましま

この年を最後に逝くと知りながら、言ひつつ冷ゆる春の言祝ぎ 上仲まさみ

年毎にひとひの重さが軽くなる重しのごとく予定を入れる 松田美智子

ロボット座流星群を見に行こう心なんて無くたっていい 深山睦美

雪道にすれ違ひたる風のためすこし未来へ傾ける傘 有村桔梗

軒に干す大根細くかわきたる今年も遅き初雪の降る 立原唯