青鷺がのそりと草の坂を登り睥睨といふ感じに立てり 大辻隆弘
同じ同じかへりても我火を放つべし世に人に天に御仏に 紀野恵
枯れすさび繁りり立つ蓮群るる間のくらくたたうる秋の水の闇 奥住毅
あと一度の雨ですべてが散るだらう黄の紅いのそのさざめきも 谷とも子
ねこはいまこたつの国の王になりときどき民に爪などたてる しま・しましま
この年を最後に逝くと知りながら、言ひつつ冷ゆる春の言祝ぎ 上仲まさみ
年毎にひとひの重さが軽くなる重しのごとく予定を入れる 松田美智子
ロボット座流星群を見に行こう心なんて無くたっていい 深山睦美
雪道にすれ違ひたる風のためすこし未来へ傾ける傘 有村桔梗
軒に干す大根細くかわきたる今年も遅き初雪の降る 立原唯