2025-04

3 塔

「塔」2025年4月号 十首

橋わたる人から影は伸びており枯れ野をおぎり水上をゆく 吉川宏志岸辺よりしずかに暮れてゆく湖(うみ)の真中はいまだ余光を保つ 三井修おかえりと家路流れるふるさとの海に沈んだ帰れない家 大林幸一郎キジバトの鳴かなくなったふるさとに飼っていく東京...
2 かりん

「かりん」2025年4月号 十首

指につまむ塩1g死魚に振りまことしづかな仕事してをり 川野里子先駆けて河津桜の膨らめり言葉を求めてゆくような永遠 遠藤由季地上より上がる寒さに水仙が言葉と同じ匂いとどける 中山洋祐窓越しに眼差し優し月読命(つくよみ)の死者と聖夜の静寂(しじ...
1 未来

「未来」2025年4月号 十首

青鷺がのそりと草の坂を登り睥睨といふ感じに立てり 大辻隆弘同じ同じかへりても我火を放つべし世に人に天に御仏に 紀野恵枯れすさび繁りり立つ蓮群るる間(ま)のくらくたたうる秋の水の闇 奥住毅あと一度の雨ですべてが散るだらう黄(きい)の紅いのその...