人外のものとなりゆくはじめにてまづ夢魔と会ふわれの残り生 馬場あき子
味爽のラナンキュラスにふるみぞれいのちは冷ゆる花といえども 大井学
民意とふ立派な車輪ゴリゴリと骨にひびける世事から降りき 土屋千鶴子
よく太つたじやが芋のごとき檸檬成る誰に分けようこの野暮つたさ 有働克子
年末の春菊の値に驚きて先発選手のかわるすき焼き 河本まさみ
地中なる紫芋は育ちをりいたくしづかな阿鼻叫喚の色に 川野里子
風は嘘を上手に手触りやわらかく路上の人を消して春くる 中山洋祐
枯れ草が川に倒れてゆく夕べ贈られしペンの書き心地愛し 奥山恵
船は行き我はそろそろ起きるから夢の続きを誰も知らない 林祐一
柚子ジャムに作る手順も馴れなじむ三日三晩のゆずのつぶやき 浅岡千枝子